この文章を書いているのがゴールデンウィークの最終日。
皆様はどのような祝日を過ごされましたか?
雅楽演奏家にとって赤い日(土日曜日や祝日)はとても大事な日になります。演奏の仕事が入る可能性が高いからです。
もちろんホールなどの演奏会の仕事が主ではありますが、例えば神社例祭での奏楽や神前結婚式での演奏などもあるので、滅多なことでは無い限り私用はまず入れません。私用は黒い日(赤い日以外の日)に済まします。
ですが、数年前からこの5月の大型連休に限っては仕事を入れず、空ける様にしています。
それはお墓参りに行くためです。
岩佐家のお墓は四国の徳島県にあるのですが、妻のお墓もまた四国の高知県で、結婚を機に5月の連休時には夫婦で二つのお墓を参る事にしたのです。
最初はそこに観光を合わせた、言ってみれば四国旅行ではありましたが最近は様相が変わってきました。
折角四国に行くのだから、四国在住の雅楽演奏家の方と交流を持とう!と考えて、積極的にこちらからお声掛けをし、現在では徳島県・高知県・愛媛県で合奏の稽古をしたりゲリラライブをしたりと、一年に一回のお楽しみ行事となっています。
こちらの日程を無理に押し付けるのですから、申し訳ないなとは思っていたのですが、毎年恒例になってくると先方も楽しいみたいで良かったです。
地方で雅楽を習う際には、それはそれは大変な苦労を伴います。指導者がいないからです。
三管(鳳笙・篳篥・龍笛)の指導者ならまだいるのかも知れませんが、打物(羯鼓・太鼓・鉦鼓)や絃(琵琶・筝)になるとその数は激減します。舞などはほぼ皆無と言って良いでしょう。
雅楽の演奏に舞が伴う演奏形式の事を舞楽(ぶがく)と呼ぶのですが、舞楽演奏になるとまず舞人が切る服(装束しょうぞく)が必要になり、これがとても高額なので手に入れることが困難になり、従って演奏の機会は無くなり、舞う必要がなく稽古も必要ない…という悪循環に陥るのです。
私のようなフリーの雅楽演奏家というのは全国でも稀有の存在です。
私は頼まれれば全国どこに行っても構いません。
最近、舞楽装束でも高価な正絹製ではなく安価な化繊製のものも増えてきていますし、レンタル業者もあります。
皆さんが雅楽や舞楽を見る機会が少ないのは、演奏する人間が絶対的に足りないのです。
とくに地方。
熱意のある方に指導することほど、指導者冥利に尽きることはありません。
年一回の四国行脚ですが、半年に一回、三ヶ月に一回と回数を増やしていけば絶対に人は育つはずです。