No.23

MUSIC

岩佐堅志の雅楽屋ブログ

舞を伝える、ということ

平成31年2月24日、東京・国立劇場では日本政府主催の「天皇陛下ご在位30年記念式典」が開催されました。どうしても御世変わりに目が向いてしまいますが、今年は平成という時代が30年も続いた、大変おめでたい年なのです。ニュース等で当日の式典の映像が流れていましたが、私も一国民として大変感激いたしました。
生でこの式典を見られなかったのには理由があります。ほぼ同時刻、舞楽の演奏をしていたからです。現在の大阪、昔は「摂河泉(せっかせん)」と呼ばれる、摂津国・河内国・和泉国の集合体でした。それぞれに一之宮が存在し、摂津国は住吉大社、河内国は枚岡神社、そして和泉国は大鳥大社となります。この大鳥大社にて、奉祝舞楽演奏の機会があり、参加させて頂きました。
演目は左方「陵王」右方「落蹲」の二本立て。鉄板の番舞(つがいまい)です。「落蹲」の舞人はもはや活動が全国レベルになってきた和歌山の小学三年生、そして「陵王」の舞人は私の生徒さんでした。

私の雅楽演奏家としてのキャリアは12歳からになりますので約33年になりますが、15歳の頃には人を指導しておりましたので、雅楽講師としてのキャリアも約30年近くになります。特に舞の指導は、全国的に圧倒的に人数が足りないことから、本当に色んな所で指導させて頂いております。そんな中、今回の舞人さんは私の一番弟子といいますか、一番長く指導させて頂いている生徒さんです。仮にSさんとしましょうか。レパートリーは20曲ほど。これは凄い数字ですよ。

話を戻します。「陵王」です。実質的にこの舞を舞う機会が一番多くなってしまいます。装束の問題もありますし、何よりお祝いの舞であるからです。私も数え切れない回数、この舞を舞ってきましたが最近は舞う機会もすっかり減ってしまいました。やはり次世代に舞を舞うという機会を譲ってあげたい、というのもありますし、底辺拡大によりより雅楽の舞をポピュラーにしたいとの思いがあります。実際、この生徒さんは今年に入って既に二回目の本番でした。管方(伴奏者)の席から、Sさんの舞を拝見しておりました。Sさんも何度目の本番なのだろうか?全く緊張することも無く、堂々とした舞い振りでした。ただ、違和感もありました。初舞台の頃、確かに技術は覚束ないのですが、その代わり緊張感というか、何ともいえない初々しさがありました。この初々しさを、ベテランになって維持することははっきり言って不可能です。初物の良さ、というのは初めにしかないものですから…。
ここでふと、舞の上手・下手って何なのだろう?と考えてしまいます。私の先生は極端な先生で「格好良かったら勝ち」まで言い切るような先生です。では格好良いって一体なんなのだろう?考えれば考えるほど分かりません。

ただ、そこには「基礎」というものの裏付けが必要になるのは当然の話です。その基礎は、しっかりとした師について根気良く稽古を重ねるしかありません。手順だけであれば動画だけでも覚えられます。しかしながら、師と向き合い、何にも分からない中繰り返し身体を動かし、そうして伝えられるもの。ここに伝統芸能の価値があるのだと考えます。私が考えるのは、自分流の笛や舞、これらが一番危険なものだということ。稽古に稽古を重ね、死ぬまで師の芸に自分の芸を寄せていく、というのが雅楽の世界のありようだと思っています。事実、Sさんには私の師にも習っていただいています。師と私の舞が違ったら大変です。私が間違いなのですから。それでも、大人の対応をしてくださるのがSさんです(笑)。なので、15年も稽古を続けてこられました。
最後に。急のイベントでしたので、告知はSNSとポスターのみ。それでも、観客として私の過去の生徒さんが二人も観に来て下さいました。ポスターにはもちろん私の名前などは書いていません。近くの神社で舞楽奉納があるらしいで、とふらっと立ち寄って下さった、とのことです。稽古を止めた今でも雅楽・舞楽に興味を持っていてくださる昔の生徒さんに、本当に感謝の思いしかありません。つくづく、この道を選んで本当に良かったと思った、そんな日でした。
告知です。4月7日(日)、今度は「西宮」の語源となった、兵庫県一之宮である廣田神社様にて開催される
「つつじ祭」

に合わせ。舞楽を奉納いたします。こちらは「迦陵頻」「胡蝶」「陵王」「落蹲」の豪華二番四曲の奉納です。もちろん観覧無料です。是非に廣田神社にご参拝下さいませ。

兵廣田神社庫県西宮市大社町7−7庫県西宮市大社町7−7

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