No.10

STAGE

元理系男子の舞台と花火と脚本戦記

演劇と天理大学

私は天理大学国際文化学部英米学科卒業なのだが、当時のこの学科は、1回生から4回生まで仲が良かった。先輩が後輩の面倒をみたり、後輩を楽しませるという事にとても意識をおいていて、敬語なども親密になる事を妨げてしまうから必要ない、と、最初に1回生の敬語をやめさせるくらいだった。
さらに、学科会というものもあり、各学科の3回生の中から選ばれた学科会長を中心に、新歓や体育祭(天理大学には学科対抗で行う体育祭があった。)、また山や海にキャンプに行ったり、そして普段も暇さえあればみんなが学会会室に集まるといった、まさにクラブやサークル顔負けの密度の濃さなのである。

当時、そんな各学科会が最も一致団結し熱い日々を送るのが、大学祭の神輿と語劇だった。
16学科あったのだが、神輿は読んで字の如く、各学科がそれぞれにちなんだ神輿を作り、その美しさや、グラウンドで行われるパフォーマンスの点数を競い合う。私がいた英米学科ではスパイダーマンを作ったり、ゴジラを作ったりといった具合だ。
そして、語劇は同じく各学科がそれぞれにちなんだ言語や内容のお芝居をして、アカデミー賞さながらの賞を競い合う。英米学科なら英語で芝居をするわけだが、演出や脚本、出演者は元より、音響や照明、字幕といったものも全て学生が担うのである。

この語劇というのが、とにかく、物凄いのだ。
演出を始め、スタッフは語劇経験者の3回生達、そして出演者は1回生なのだが、お芝居経験など皆無の1回生が、後期の授業が始まる9月下旬以降、発声練習など一から放課後に行う。この時ばかりはいつも優しい上級生も心を鬼にして、厳しく指導する。出来ない自分に悔し涙を流す1回生、厳しく接する上級生も内心は心苦しく、影で涙を流す。校内の至る所で、各学科が稽古しているため、そういった青春ドラマが至る所で起こっている。
そして、これは日本語の芝居ではない。英米学科なら英語、スペイン学科ならスペイン語といった風に、あくまでも語学劇なのだ。
当時の私はお芝居に興味もなく、神輿担当で楽しく和やかに神輿を作っていた。そんな私も、稽古風景を見ると、熱量と各々の想いが溢れ出ている様を感じていたのだが、実際、同級生たちが演じる語劇を終わった後、何かの緊張から解き放たれ、スタッフ、出演者が抱き合って涙する姿に、私ももらい泣きをしそうになった事を覚えている。
当時は同級生が演じている事での、もらい泣き程度に思っていたが、卒業してから、幾年か過ぎお芝居をやり始めた頃、在学中に学生自治会の総務委員長をしていた事もあって、この語劇の審査員として招かれた事があった。
間が、とか、あそこの動きが、とか、台詞のニュアンスが、とか、細かく探せば、お芝居を生業としている者なら、いくらでも指摘する箇所は出てくるかもしれない。
だが、その舞台に立っている1回生と思わしき出演者たちは、役者たる堂々とした立ち振る舞いなのだ。きちんと何かを背負ってその舞台上に立っているのだ。全く知らない生徒達が演じる芝居に、私は涙をこらえていた。
『これか!』
その姿に、在学中、漠然と見ていた稽古風景を思い出し、彼らが背中に背負っている覚悟に私は感動しているのだ、と気づいた。

たった一度きりの舞台。とかく学生時代というのは、その一瞬のためのドラマに、見ている者の涙を誘う。
勿論、私も、その一つ一つの舞台にかける覚悟や想いに嘘偽りはない。面白いものを創っているという自負だってある。
だが、この語劇のスタッフ達上級生が出演者の下級生に受け継ぎ続けている、厳しさと溢れる想いと涙でできていた、『覚悟』にはやはり及ばないモノがあると私は思うし、私達がそれを手に入れるために研鑽を重ねているとも思う。

天理大学の学祭に訪れる機会があって、語劇をやっているならば、是非とも観て欲しい。それはスポーツや音楽などを始めとしたクラブとも少し違い、我々、プロの舞台人が創る舞台とも違った何かを、大人のあなたに吹き込んでくれるはずだ。

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